| 本武 CO2問題、オゾン層問題、水問題、食品問題など、今私たちはさまざまな環境問題を抱えており、それは基本的に生物としての命に関わる問題です。環境悪化に対し、今こそ私たち生活者も政治も真剣に真正面から取り組む時期だと思っています。そのような中、世界規模での地球温暖化に対し、この2月16日に京都議定書が発効しました。これは画期的な前進だと思いますが、まだ問題も抱えています。
当初参加予定だったアメリカが脱退し、今年になってロシアの参加を得て議決から7年目でようやく発効の運びとなったわけです。世界のCO2は、北米で27%、ヨーロッパ全体で28%、アジアで30%の排出量と言われていますが、第1位のアメリカ25%と第2位の中国15%が抜けているのは、誰が考えても大きな問題だと思います。
日本だけでアメリカの不参加の意志を変えるのは難しいと思いますが、野田代議士はどうお考えですか。また、今後日本の目標達成に向けた手順は、どう進んでいくのでしょうか。
野田 日本の環境問題の歴史は、水俣病やイタイイタイ病、四日市ぜんそくなど公害問題からスタートしています。経済成長に伴う廃棄物が人体に及ぼす影響が原初的問題でした。特定の河川や水、土地など地域的対応が中心だったということです。
現在は地球温暖化の問題など世界共通の問題があり、これは一国だけの対応では解決できないことで、地球全体での対応が必要として、「温暖化の原因となるCO2などの温室効果ガスの排出量の多い国が、排出量を抑えよう」と京都議定書の国際枠組みが作られたわけです。
京都議定書の取り決めでは、2008年?2010年度を目処として、排出量の年平均値を1990年に比べて6%削減することを目標としています。2003年の実績を見ると、日本の温室効果ガス排出量は1990年に比べ約8%増えており、1990年比の削減目標6%を実現するためには、14%の排出量削減を達成しなければなりません。これは、正直に言って大変高いハードルです。
国際的取り決めである京都議定書がスタートした以上、日本は、排出量の少ない国と排出量のやり取りができる京都メカニズムも活用しながら、目標達成を実行していくべきです。
現在政府では、「京都議定書目標達成計画」を作成中であり、3月には計画案の取りまとめを行い、パブリックコメント・公聴会等を経て、5月頃には対策本部及び閣議での決定がなされる予定です。
また、CO2の排出量は、運輸部門や業務・家庭部門からなる民生部門で特に増加しており、これらの分野での対策強化が必須と言えます。そこで、政府による計画とは別に、より迅速な対応として、今国会へ「エネルギー使用の合理化に関する法律(通称省エネ法)の改正案」、「物流業務の総合化及び効率化の促進に関する法律案」等の法案を提出し、産業・運輸・民生の各分野でのCO2排出抑制の抜本的強化を図ろうとしています。このように、日本はすでに、目標達成に向けて動きだしているのです。
ただ、以前から行っている中国への植林や熱帯雨林へのODAは、世界規模での温暖化防止に貢献していると思いますが、現在の枠組みの中ではこれらの活動は日本のグリーンとしてカウントされないことになっています。参加国と非参加国のCO2排出量を考えてもアンバランスな感がありますし、削減目標達成とは別のテーマとして、今後枠組みの見直しを考えていく必要があると思います。
本武 酸素を生産する海の海藻や植物性プランクトン、森林を増やすこと、これ以上減らさないこともCO2削減につながっていくので、CO2削減と酸素生産のバランスを取る考え方も必要だと思います。その点で、発展途上国への援助や技術指導はその一助だと思いますし、それが評価されないのは疑問が残るところです。不参加や削減未達成の罰則も定められていないなら、「入らない方が得だ」ということにならないようにしないといけません。枠組みの作り直しの必要は、次の段階として確かにあると思います。
ところで、昨年、アメリカ・カリフォルニア州に大型ハリケーンが3個も上陸し、甚大な被害を及ぼしました。また、アジアでも中国で大洪水が起き、日本にも過去最多10個の台風が上陸するなど様々な気象災害が起きています。このような世界各地での異常気象の遠因は、発展途上国も含めたCO2排出による地球温暖化にあると考えられます。
このような状況では、各国の経済的マイナスも莫大なものになるでしょう。その観点からも温暖化防止のためのCO2削減が不可欠です。同時に、CO2削減の技術とノウハウを持つ日本は、諸外国にその技術やノウハウを売ることで、経済を潤すことができるのではないでしょうか。
野田代議士は、この点について、どうお考えですか。
野田 中国でも、河川上流における森林伐採の影響で洪水や水飢饉が起こり、これが環境問題だけではなく、中国の経済発展の阻害要因になるとの認識が芽生えてきています。そこで、中国政府も今まで以上に本腰を入れて環境対策を考え始めています。
世界的に環境と経済の関わりが意識され始めた中、日本の環境対策技術とノウハウは、より注目されていると言えるでしょう。例えば日本車は、世界でも最高レベルの燃費性能を誇っていますし、排気ガス(CO2)の排出も少ない。それが日本の自動車産業が世界トップクラスに成長した要因の一つだと思います。日本が努力して技術開発してきたことが、環境を軸とした場合の経済競争で有利に働いてきているわけです。
また、生活に関わる中でのCO2削減策を考えると、省エネルギーや建物の建て方、物資の輸送方法などでのCO2削減を図ることが不可欠で、これは日本の技術のレベルアップで対応できていくでしょう。そこにも、経済効果をもたらす技術が生まれてくることが期待できます。
本武 これからの世界経済の中では、環境を良くする国が経済的に豊かになる図式にすることがベターだと思います。野田代議士がおっしゃったように、日本は環境対策の技術レベルが高いわけです。今後の世界では、それがビジネスチャンスになるような方向性が考えられると思います。
それが、停滞気味の日本経済を立て直すチャンスになるでしょうし、さらにはアジア・世界で日本がリーダーシップを取るチャンスにもなってくると思います。これらの点を鑑みると、国の方針として、環境経済文化モデル国家を目指すべきだと思いますが、国の方針としてはいかがでしょうか。
野田 全くそのとおりです。現在、憲法改正が大きなテーマとなっており、その中で環境配慮・自然共生を日本の文化・生き方として位置づける考えがあります。
もともと日本は自然信仰で、自然に合わせて生きてきた民族であり、「自然共生」という考え方が根付いていると言えます。高度経済成長期には、自然を克服して支配しようとしてきたヨーロッパ的考え方に傾倒していましたが、現在ではもともと日本にある「自然と共に生きる」という姿勢を、世界的にも見直す発想が浸透してきています。
自然に合わせて生きてきた歴史と伝統を持つ日本は、環境技術やノウハウとともに、地球規模で今こそその精神を発信していくべきでしょう。
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