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野田たけしはこう思う
 地球環境を考える3〜有明海再生へ〜
  山から海へ至る生態系も視野に世界のモデルケース的再生を。
        対談:野田たけし&本武三郎氏(NPO法人環境経済研究所・株式会社ブルーアース21代表)
 
2005.04.15 
 

本武 「有明海及び八代海を再生するための特別措置法」いわゆる有明海新法が施行されました。有明海には緑川・白川・菊池川・矢部川・筑後川・嘉瀬川・境川・塩田川・鹿島川の九つの大きな川が流れ込み、支流まで含めると大小50以上の河川が流れ込んでいます。これらの河川からの汚水の流入は、有明海に大変大きな影響を与えていると思います。本武氏
河川源流をたどれば山に行き着きますが、山からの流れの中で途中にダムや堰が造られ、山の土壌からのミネラルや有益微生物等も海まではたどり着けないことになってしまいます。また、海からも、魚達が川を伝わって山に上って行き、熊や鳥達に捕らえられ、山の生物にミネラルを補給しているのです。その他、田畑の除草剤、家庭での合成洗剤の使用により、河川から海までの多様な生物達の命に大きな影響を与えています。
このような状況を打破し、有明海を生きた海に再生するためにも、海ばかりではなく海へ至る自然環境を含めた視点が必要だと感じています。
野田代議士は、この部分をどうお考えでしょうか。
野田 有明海の環境問題はノリの不作が引き金になりましたが、もっと早くから分かっていれば、早い段階で対応ができただろうと、私も反省しきりです。今、漁業者をはじめとする関係者が、やっと「有明海が死んでいっている」という危機感、認識を共有したということだと思います。野田たけし
有明海のような閉鎖海域の場合、本武さんがおっしゃる通り、海だけではなく山や川、農業、生活排水すべてを包括した視点を持たなければ、根本的な解決・再生にはつながらないでしょう。
二年前に法律が成立し、それに基づき関係各県が計画策定を進めていますが、有明海の状況についてまだ科学的見地が確立されていない部分もあり、そこには生態系という視点を加え、勉強していくことが必要です。それをベースに、具体的にどう再生を図っていくか、実効ある施策を行っていくことが大切だと考えています。
有明海新法は、再生に関する骨格法です。それを軸に、着実に再生を進めていこうという動きになっており、私も微力ながら再生に力を尽くしたいと考えています。
本武 悪い現象が目に見えないと、物事は改善されていかないものだとも言えます。ある意味で、今、有明海を取り巻く生態系を含めた環境を見直す転機が訪れたとも言えます。この機会を生かしていくことが、今後の社会の進歩につながっていくでしょう。
野田 農業での農薬使用が河川から海に影響を及ぼすことは、この100年ほどの蓄積によって露出してきた問題です。急激な近代化により、自然との関わり方が変化し、様々な部分で弊害を生んでいると言えるでしょう。日本でも、近代化時の弊害が短期集中して露出してきているように思えます。そういった意味で、確かに現時点で課題に取り組むことができるのは、まだいいことなのかもしれません。
閉鎖水域というカテゴリーで言えば、日本以外にも同じような水域があり、それらの水域での近代化に伴い有明海と同様の問題が露出してくる可能性もあります。有明海の再生は、世界に先駆けた再生のモデルケースとなるようなものにしていくことが望ましいと考えています。
本武 そのためにも、生態系を含めた総合的な視点を持って、周囲の自然環境も考慮した対策を取っていくことが肝要だと思います。その点において、現在野田代議士はどうお考えですか、また、具体的な動きというのは行われているでしょうか。
野田 生態系と環境の関わりについて面白いエピソードがあります。戦後の日本では、とにかく国を復興させることが最優先でした。野田たけしその中で、食料自給率を上げるために農業で農薬を使い生産量・効率を向上させることが第一義でした。また、住宅需要への対応と林業再生ということで、山には杉や桧を植林し、緑の山を復活させました。米の生産が需要に達した時、当時の農林大臣が昭和天皇にそのことを奏上したところ、「それは良かった。それで農薬を使ってどうやって益虫を残しているんですか」と尋ねられたそうです。森林にしても「どうして針葉樹ばかりで広葉樹は植えないんですか」と質問された。しかし、当時は広葉樹の効果についてほとんど知られておらず、担当者はその質問の意味さえ分からなかったといいます。
現在は、広葉樹の落ち葉が微生物を育て土壌を豊かにし、その栄養分が海へと流れ、海も豊かにしてくれるということが分かってきています。ですから、針葉樹ばかりでなく、広葉樹の植林も広がりはじめています。また、ダムへの崖崩れなどを防ぐためにも広葉樹が効果的だということで、ダム周辺の山々には広葉樹を植えるようになってきています。このように、自然環境と人が生活する環境のバランスを研究する中で様々な事が分かってきており、それに対応した対策も実践されてきているわけです。
本武 山から海への環境を改善する策として、有機や自然農法の採用、合成洗剤の販売使用禁止、あるいは山菜栽培、茸類の栽培、エコツアー、除草剤排除により復活する山女やウナギ、川ガニ、マス類の収穫による林業従事者の復活。本武氏ダム堰類の廃止による用水路や溜池の復活など、さまざまな方策が考えられると思います。これらの策は、例えば林業ではそこに働く場が創造され、海が蘇り、漁業の復活で食料自給率も上がり、自然洗剤生産等で働く場ができ、海沿い・山沿いで雇用も増え、若者も地元に残り、大きな経済効果も生み出せると思えます。また、農薬や合成洗剤の禁止で山も海も人間も健康になり、医療費削減も期待できるかもしれません。有明海再生のテーマは、野田先生のおっしゃっている日本再生の大きなモデルケースになるのではないでしょうか。
野田 確かに本武さんがおっしゃるように、有明海再生と経済とは結びつく部分があるように思います。例えば周辺地域で合成洗剤の使用禁止の条例を制定した場合、有機洗剤を生産する企業が増え、消費者も容易に有機洗剤を手にできる環境を生み出してくれるでしょう。生産する企業も生産性・収益性がよくなるわけです。また、山での産物の生産性が上がったり、周囲の川での生産性が上がる事も考えられます。経済も含めた再生サイクルが構築できれば、それこそ世界的なモデルケースにできることであり、そういった方向も見極めながら、有明海再生に務めていきたいと考えています。


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